アルゲンティア戦記
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RELATION人物相関図
人物9
クオ
人物存命神授の儀で《無印》と判定された十五歳の孤児。父の死を知ったのち、十五年暮らした村を捨て、丘を越えて広い街道へ——誰も自分を知らない外の世界へと踏み出す。
別名: 無縁仏の子
アルゲンティアの辺境の村に生まれ育った少年。両親を知らず、村はずれの納屋で独り暮らし、村人からは「無縁仏の子」と呼ばれて空気のように扱われてきた。
十五歳の《神授の儀》で授かったのは、何も書かれていない空白——《無印(ナル)》だった。神は一行の判決文すら記さず、クオはこの国の物差しで『人間ですらない何か』とされ、村に居場所を失った。
村を出ようとした夜、村はずれの忘れられた古井戸の底から、老女の声がクオの名を呼んだ。声は、クオには父がいたこと、その父もまた《無印》であったこと、そして父は村もろとも一夜の火に焼かれて灰となり、クオだけがその灰からこぼれ落ちた唯一の生き残りであることを、少しずつ明かした。なぜ村が焼かれたのか、なぜ自分だけが生き延びたのかは、まだ分からない。
四つの問いを胸に抱えたまま、クオは十五年暮らした村を捨て、丘を越えて広い街道へ出た。あの村の烙印が届かない、誰も自分を知らない世界へ。その空白の手に、これから何を書くのか——それは、まだ誰も知らない。
関係
- → クオの父 — 血を継ぐ[友好](井戸の声に、父の実在と死、父もまた無印であったことを知らされた。クオは父に一度も会っておらず、名も素性も知らない。)
- → ザイル — 縁を残している(申し出は保留)(楼の差配役ザイルから裏方の働き口(飯と寝床)を持ちかけられたが、見聞を広げるため申し出は断った。ザイルは『賢しい餓鬼だ』と見直し、『気が変われば楼を訪ねてこい』と縁を残した。クオはうますぎる話を警戒しつつ、その名を覚えた。)
- ⇄ セレネ — 幼馴染(決別)[友好](幼馴染。聖女候補となり住む世界が分かれた。去り際の謝罪をクオは拾わなかった)
- → 井戸の声(老女) — 警戒している(声の語ることを『都合のいい救いは罠』と疑い、即座には信じない。ただ、声の言葉に繋ぎ止められ、その場を立ち去れずにいる)
- → 夜啼鳥 — 心を惹かれている[友好](歌い手『夜啼鳥』の歌に強く心を動かされた。名も素性も知れぬ点に、無縁仏の子である自分との奇妙な符合を感じている。まだ言葉は交わしていない。)
- ← 村人 — 疎んでいる[対立](クオを無縁仏の子と呼び、穢れのように避ける)
変遷
- 神授の儀で無印と判定され、村の前で人間ですらないと裁かれた。
- 夜明けに古井戸へ引き返し、声に父を問い質した。父の実在と死、そして父もまた無印であったことを知る。
- 父の死に方を問い質し、父は火で死に、村がひとつ一夜で灰になったこと、その灰から自分だけがこぼれ落ちたことを知る。なぜ自分だけが生きているのか、新たな問いを抱いた。
- 十五年暮らした村を捨て、丘を越えて街道へ出た。あの村の烙印は外には届かない。誰も自分を知らない世界へ、灰の重さを抱えて歩き出す。
クオの父
人物故人クオの父。すでに故人。井戸の声いわく、クオと同じ《無印》で、村もろとも一夜の火で焼け死に、灰の下にあるという。名も、火の理由も、まだ明かされていない。
クオの父。クオ自身は一度も会ったことがなく、その存在すら知らずに育った。
井戸の底の声によれば、確かにこの世に在った男であり、クオと同じ《無印》であった。
その死に方も、声が明かした。火である。ある一夜、その父が暮らした村は、家も畑も人も、何もかもが焼け落ち、ひと晩のうちに灰になった。父はその灰の下にあり、墓も、骨も、名を刻む石もないという。
しかし、誰が・なぜその村を焼いたのか、そして同じ灰の中からなぜクオひとりが生き延びたのかは、まだ語られていない。声は『順序がある』とだけ言い、それ以上を明かさなかった。
関係
変遷
- 第六話で、井戸の声によってその存在が初めて明かされた。実在し、すでに故人で、クオと同じ無印であったとされる。
- 第七話で、その死に方が明かされた。火で——村もろとも一夜で焼け、灰となった。墓も骨もなく、灰の下にあるという。
ザイル
人物存命宿場町の歓楽の一帯で、ある楼閣の差配を任されている男。三十がらみ。地味だが仕立てのよい衣をまとい、人を見抜くような油断のならない目を持つ。歌に本気で聴き入るクオに目を留め、名を訊いて、裏方の働き口(一晚の労働と引き換えに飯と寝床)を持ちかけた。
関係
- ← クオ — 縁を残している(申し出は保留)(楼の差配役ザイルから裏方の働き口(飯と寝床)を持ちかけられたが、見聞を広げるため申し出は断った。ザイルは『賢しい餓鬼だ』と見直し、『気が変われば楼を訪ねてこい』と縁を残した。クオはうますぎる話を警戒しつつ、その名を覚えた。)
変遷
- 第13話で初登場。歓楽の一帯の楼閣の差配役。歌に聴き入るクオに声をかけ、本名を伏せる歌い手『夜啼鳥』について語った。クオの『歌を聴ける耳』に目を留め、裏方の働き口を持ちかけた。
セレネ
人物存命井戸の声(老女)
人物存命忘れられた古井戸の底からクオの名を呼んだ声。正体は不明。クオの父と、その死、焼けた村について確かな何かを握っているが、核心は『順序がある』と小出しにする。
関係
- ← クオ — 警戒している(声の語ることを『都合のいい救いは罠』と疑い、即座には信じない。ただ、声の言葉に繋ぎ止められ、その場を立ち去れずにいる)
変遷
- 古井戸の底からクオの名を呼び、「十二年待った」と告げて初めて声を現した。
- 誰何したクオに応じたが、名も正体も明かさず『順序がある』と問いをはぐらかした。去り際『お前の父は——』と言いかけて口を噤み、クオに初めて父の存在を意識させた。クオを縛らず、『無印は欠陥ではない』と告げて退いた。
- 夜明けに戻ったクオの問いに応じ、父の実在と死、そして父もまた無印であったことを明かした。ただし父の名・素性・死の経緯は『順序がある』と語らず、『また来い。井戸は逃げん』と退いた。
- クオの問いに応じ、父は火で死に、村がひとつ一夜で灰になったこと、クオだけがその灰からこぼれ落ちたことを語った。だが誰が・なぜ焼いたかは『順序がある』と退け、『また来い。井戸は逃げん』と去った。
夜啼鳥
人物存命宿場町の歓楽の一帯で、ある楼閣の歌い手。澄んで哀切な歌で評判を呼び、客はその声を聴くためだけに遠方からも通う。本名も、生まれも、いつからそこにいるのかも、誰も知らない。自ら何ひとつ語らぬため、客は夜更けに啼くような声から『夜啼鳥』の異名で呼ぶ。灯りの落ちた深夜、誰も聴いていないと思ってひとり口ずさむ、飾りも技もない剥き出しの歌を、クオだけが通りの闇から聴いた。
関係
- ← クオ — 心を惹かれている[友好](歌い手『夜啼鳥』の歌に強く心を動かされた。名も素性も知れぬ点に、無縁仏の子である自分との奇妙な符合を感じている。まだ言葉は交わしていない。)
変遷
- 第12話でクオがその歌に聴き入り、歌い終えた後に一瞬目が合った。第13話で、客が異名『夜啼鳥』と呼ぶこと、本名も素性も誰も知らないことが、差配役ザイルの口から語られた。
- 第15話。灯りの落ちた深夜、閉てた窓の奥で、誰にも聴かせるつもりなく同じ調べをひとり口ずさんでいた。囃す楽も張りもなく、飾りも技もない、剥き出しの悼みだけの歌。クオはそれを盗み聴き、あの歌が銭のためでなく何かを悼むためのものだと悟る。歌は途中で糸が切れるように絶えた。この夜も言葉は交わされず、名も素性も分からぬまま。
宿の女将
人物存命宿場町でガロの定宿を切り盛りする女将。五十がらみで恰幅がよく、太い腕とよく通る声の持ち主。ガロとは古い顔なじみ。宿代を自分で払うと言い張ったクオを見て『いい目をしてる』と評した。
宿場町で、麦穂を象った看板を掲げる二階建ての宿を切り盛りする女将。歳の頃は五十がらみ、恰幅がよく、太い腕を腰に当て、よく通る声で物を言う。
旅商人ガロとは古い顔なじみで、遅い到着にも気さくに応じる。ガロに連れられてきた見知らぬ少年クオが、宿代を『自分で払う』と言い張ったのを見て、片眉を上げ、ふっと口元を緩めて『いい目をしてる』と評した。クオが村の外で出会った、二人目の他者である。
変遷
- 第10話で初登場。ガロの定宿の女将。宿代を自分で払うと言い張ったクオを『いい目をしてる』と評した。
旅商人
人物存命街道で荷馬車を駆る旅商人。名はガロ。東の宿場町と西の村々を行き来し、塩・鍋・布などを村の産物と換える。ぬかるみで難儀していたところをクオに助けられ、礼に糧を分け、宿場町まで同道した。クオを「坊主」と呼び、荷運びの駄賃を払った。
別名: ガロ
街道で荷馬車を駆る旅商人。名はガロ。四十がらみの、ずんぐりとした体つきの男で、日に焼けた、人の好さそうな、しかし抜け目のなさそうな顔をしている。
東の宿場町と西の村々のあいだを行き来し、塩・鍋・布など村にないものを運んでは、麦や干し肉と換える稼業。ぬかるみに車輪を取られて立ち往生していたところをクオに助けられ、礼に乾いたパンと水を分けた。宿場町までの荷運びを持ちかけ、道中で名を「ガロ」と明かす。人との距離の取り方を心得ており、クオの素性を深くは詮索せず、荷下ろしの駄賃として銅貨を払った。
クオが村の外で初めて言葉を交わし、初めて手から手へ糧を受け取り、初めて名を名乗った相手である。
変遷
- 第9話で初登場。街道のぬかるみで荷車の車輪を取られていたところをクオに助けられ、礼に乾いたパンと水を分けた。クオを「坊主」と呼び、宿場町への同道と荷運びを持ちかけた。
- 第10話で名を「ガロ」と明かし、宿場町まで同道。荷下ろしの駄賃をクオに払った。
老神官
人物存命場所3
クオの村
場所宿場町
場所街道で最も大きい宿場町。丘の斜面に何百もの灯りが連なり、夜も明るく賑わう。クオが生まれて初めて目にした『町』。
街道沿いで最も大きいとされる宿場町。丘の斜面に家々がびっしりと建ち並び、夜になっても何百もの灯りが金色に滲んで、低い石の壁がそれを囲む。
門をくぐれば、石畳を踏む無数の足音、客を呼ぶ店主の声、弦の音、焼ける肉や酒の匂い、人いきれが一度に押し寄せる。村の祭りの何十倍もの賑わいが、ごく当たり前の日常としてそこにある。あまりに人が多く、一人の少年など波間の木の葉ほどの存在でしかない——その匿名性は、クオにとって恐怖であると同時に、めまいのような自由でもあった。町の名は、まだ語られていない。
変遷
- 第10話で、クオが街道を経て初めて到達した町。生まれて初めて見る『町』の規模と灯りに圧倒された。
焼けた村
場所クオの父が暮らし、ある一夜、家も畑も人も何もかもが焼けて灰になった村。名も場所も、まだ明かされていない。クオはこの灰の中からただひとりこぼれ落ちたとされる。
クオの父が暮らしていたとされる村。
井戸の底の声によれば、ある一夜のうちに、家も、畑も、人も、犬も、何もかもが焼け落ち、灰の野と化したという。クオの父もその灰の下にある。
そして、その灰の中から、ただひとりこぼれ落ちた火種——それが、村はずれの納屋に残されていた赤子、クオであったらしい。
村の名も、どこにあったのかも、何より誰が・なぜ焼いたのかは、まだ明かされていない。
関係
- ← クオの父 — 暮らした(父はこの村に暮らしていた。村は一夜の火で焼け、父も灰の下にある。声が語った伝聞で、村の名も場所もまだ不明。)
変遷
- 第七話で、井戸の声によってその存在が語られた。父が暮らし、一夜で焼けて灰になった村。クオはその灰からこぼれ落ちた唯一の生き残りとされる。
勢力1
村人
勢力用語1
無印(ナル)
用語最下層の格。何も書かれていない空白のスキル。第一話時点では「ただの空白」としか認識されていない
神授の儀で何も授からなかった者に下る判定。手に一行の文字すら結ばれない、空白の結果。格序列の最下層に置かれ、村では「人間ですらない何か」と見なされる。第一話の時点では、ただ神に見放された欠落としてしか認識されていない。
世界ルール1
神授の儀
世界ルール15歳で神からスキルを授かる年一度の儀式。授かった格が生涯の席次を決める。
アルゲンティアで、十五歳を迎えた子供が神からスキルを授かる、年に一度の儀式。神官の詠唱で水晶が光り、子供の手に一行の「判決文」=スキルが結ばれる。授かる格がそのまま社会での席次を決め、人はその一行を抱えて生きる。白紙で終わる者はいないとされてきた。
変遷
- クオに対し、史上例のない「何も結ばれない」結果を示した。
歴史
- 現在クオ、神授の儀で無印と判定される関連: クオ・神授の儀
- 現在クオ、井戸の声と対話し、初めて父の存在に触れる関連: クオ・井戸の声(老女)
- 現在クオ、村を離れ村はずれの古社で一夜を明かす関連: クオ
- 現在クオ、井戸の声に父を問い、父もまた無印だったと知る関連: クオ・クオの父・井戸の声(老女)
- 現在クオ、父が火で——村ごと——死んだと知る関連: クオ・クオの父・井戸の声(老女)
- 現在クオ、十五年暮らした村を捨てて街道へ出る関連: クオ
- 現在クオ、街道で旅商人と出会い、外の世界で初めての糧を得る関連: 旅商人・クオ
- 現在クオ、宿場町に着き、初めて働いて駄賃を得る関連: クオ・旅商人・宿の女将
- 過去父の村が一夜の火で焼け、灰になる関連: クオの父・焼けた村